食べかすだらけでも虫歯のない子供


 本当なの? 歯の常識

「歯槽膿漏になって歯をなくさないためには、
一日食後に三回、一回あたり 20分はていねいに歯を磨いてください」と
歯科医にいわれて、
「たしかにそうかもしれないが、いざ実行するとなると仕事もあるし、
朝昼晩、 しかも20分となるとこれはたいへんだ」と頭をかかえている中年の方も多い ことでしょう。
現在の虫歯予防に対する常識ては、砂糖を取ることはイコール 虫歯になることであり、
歯垢がつくことはイコール虫歯や歯槽膿漏の原因という 図式ができあがっています。
そこで、何が何でも口の中を清潔にすることが、 虫歯や歯槽膿漏にならないための
最上の予防法と医師にも一般にも理解され、 実行されているわけてす。
ところが、私から見れは、お母さんから チョコレートをもらって、
口のまわりをチョコレートだらけにして、 にこにこと笑顔で食べている子どもが、
実は虫歯になりにくい心身の状況 にあり、
お母さんに叱られてチョコレートを取り上げられ、子ども心にも 虫歯になることを恐れて、
一心に歯を磨いている「よい子」の方が、 はるかに虫歯になりやすい心身の状況にあるのてす。
私たちのグループは、 毎年春、大勢の小・中学生や大人を対象に口腔内の検査をしています。
その多くの検査結果が示す事実は、余り歯磨きを気にしないで、
元気に 飛び回り、イタズラ好きで明るく、自由に、活発に活動している子供ほど、
たとえ口の中は汚れている状態であつても、虫歯が少ないということです。
歯槽膿漏などの歯周疾患の場合も同じことで、
60代や70代の方で、 きちんとした歯磨き習慣を持たず、
口の中が汚れていて、母垢(ブラーク)が たくさんついていても、
歯が全 部残っていて口の中は健康である人がいます。

歯は生き物である

スタインマンは、情緒を不安定にするような薬物、たとえは交感神経を 緊張させる
ブラデ ィキニンのような薬物を投与すると、歯冠部から歯髄部へ と体液が流れる。
つまり、歯の外 側の組織から、内側の組織へと体液が流れる わけですが、
そういうときに、虫歯に感染するのではないかと考えたのです。
そこで彼は、ネズミに砂糖をいっさい与えず、ブラディキニンという物質を 与え続けて、
ネズミが虫歯になるかどうかを観察した。
そうすると、 いっさい砂糖を与えていないにもかかわらず、
通常のネズミより17倍もの 発生率で、ブラディキニンを与えたネズミに虫歯ができたのです。
このブラディキニンいう物質は、私たち人間にも、不快だとか痛みがあるときに
血液中 に多く現れる物質です。
逆に、情緒が安定するペタネコールクロライドと 言う薬物をあたえてやると
ネズミは精神が安定し、リラックスして歯髄部から 歯冠部へと、
つまり、歯の中心部の組織から外側の組織へと体液が流れる状態 になります。
そうした状態にしておくと、こんどはネズミに砂糖を与えても、 ほとんど虫歯にならないのです。
健康で悩みがなく、屈託ない人生を過ごして いる人に、
虫歯や歯槽膿漏が少ないという臨床例が多いのですが、動物実験で これが確かめられたということです。
これと何じようなことが、歯にも歯茎にも 日々おきて、不健康な生活や不愉快な日常を送っていると、
歯も、虫歯や歯周病に 罹りやすい状態になるのです。
S・IgA(分泌型・イムノグロブリンA)という、細菌感染から私たちの身体を守つて くれる抗体が
唾液の中に含まれています。
この物質がどんな心身状態にあると、 唾液中によく分泌されているかを
アメリカで調べた実験結果があります。 37人の30代の女性を集めて二つの異なった状況下に置いてみました。
一つの状況下では不安になったり、怖くなるような話を聴かせかせ映像を見せます。
もう一つの状況では、楽しくなるような、気分がリラックスするような話を 聞かせ映像を見せます。
その後、被験者の唾液を取つて調べると、不安や恐れを 抱くような話を聴いたり映像を見たときには、
あきらかにS.IgAの分泌が少なく なっていて、
楽しい気分になる話を聴いたり映像を見たときではS-IgAの分泌が 明らかにおおかつた。
虫歯や歯槽膿漏という病気は、細菌学上ではまさしく「日和見感染」として 認知されています。
日和見感染とは、人間側が普通の生理状態を保つて環境に 適応している限りでは、
菌の存在が何の問題も起こさず、人間と細菌がお互い 仲よく共存しているのに、
たとえば、環境の変化や精神的な変化で、 人間の側に何らかの生理的な適応能力の異常が起こると、
菌との共 存関係が崩れて菌に感染することをいいます。
このように、共存関係 の崩壊は、「宿主側に何らかの事情があると起こる」のです。
受験時代に虫歯が多発したり、自分の能力を越えた職種に就いたり、
言語や生活習慣が違う国へ行く海外出張のときなどに
虫歯や歯周疾患が 重症化することがわかっています。
今日では、社会構造が変わり、食生活が変わり、人間関係が変わり、
自然から離れた生活を送つていて、 「人間側の方に生理的な通応能力が落ちている」
という大きな変化があるに もかかわらず、例の虫歯予防の常識では、
こうした人間と虫歯菌の関係を無視して、
一方的 に虫歯菌を人間に寄生している悪者としてとらえ、
「虫歯は普遍的な日和見感染である」という概念まで捨ててしまっています。                 

 東京医科歯科大学 志村先生より



肯定的に、明るく、楽しく生きる


前のページに戻ります。

ホームページに戻ります。